新型コロナウイルスにより社会のあり方そのものが変わり、ニューノーマルが浸透し始めてどれくらい経ったのでしょうか。企業は従来のビジネスのあり方では苦しくなるところもあり、DXの推進はそんな状況の打開策として期待の高まるものです。
DXの実現を急務とする中、推進にあたっての人材の確保が悩ましい問題として立ちはだかっています。日本国内では、もともとIT人材は不足していました。更に高いスキルを持った人材が必要となると、高い給与で募集しても条件にあう逸材は中々出てこない状況となっています。
そんな状況下で提唱されるIT人材不足の解決方法が「リスキリング」です。リスキリングにより既存人材が新たなスキルを習得して、DXを推進するIT人材として活躍するシナリオが俄然注目を集めています。本記事ではリスキリングの意味と実施に伴う課題を紹介します。
リスキリングとは、スキルの再獲得を意味しています。対象者は現在企業で働く世界中の人です。現在の職業や次の職業に向けて必要な、大幅な変化に適応するためのスキルを習得すること/させること、というのがより詳しい説明となります。
前出のダボス会議でもリスキリングの必要性が取り上げられており、リスキリング革命として「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」とも宣言されています。海外の大手企業では、すでにリスキリングが実際に行われており、AT&T、Amazon、Microsoft等による取り組みが事例として有名です。
日本国内でも経済産業省の「デジタル時代の人材政策に関する検討会」などで大きく取り上げられており、その支援を行うための認定制度などが整備され始めています。
日本では、IT人材はもともと不足していました。2019年の経済産業省による「- IT 人材需給に関する調査 -」では、国内のIT人材は2030年に最大で30万人の不足が発生すると予測しています。その主な原因としてあげられているのが、下記です。
・人口減による労働人口の減少
・IT人材の育成には長い教育期間が必要となる
この原因に対しては簡単に対処できるものではなく、今後もこのIT人材の不足傾向は変わらないと考えられます。
さらには、IT人材の中でも特に必要とされるのは先端技術を持った人材です。経済産業省の「我が国におけるIT人材の動向」では、先端IT人材が特に求められており、高給は用意されているものの需給が満たされていない状況を見て取ることができます。スキルを持った人材は何処に行っても不足している状況なのです。
世界中ではDXを推進するIT人材の不足が課題となっています。世界経済フォーラムの年次定例会(通称ダボス会議)において、その打開策が2018年から2020年に欠けて繰り返し議題に登っていることが、その状況を裏付けています。(※ただし、背景にはデジタル技術の浸透により単純労働が減少し、その失業者対策という意味合いもあります。)
そんなIT人材の不足の有力な解決方法として挙げられているのがリスキリングです。
DXについて、今一度おさらいしておきましょう。
DXとはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、デジタル技術を使ったビジネスの変革、新たな価値の創造を意味する言葉です。デジタル技術の浸透が、人々をあらゆる面で良い方向に変化させるという仮説が元となっています。
⇒「【完全版】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?これを読めばすべて分かる」
参考:Eric Stolterman, Anna Croon Fors. 「Information Technology and The Good Life」
総務省「平成30年版情報通信白書」
インターネットの普及やSNSでの情報発信により、ユーザは多くの情報を得て、サービスや商品を比べることができるようになりました。その結果、ビジネスの比較対象が世界注のプロダクトとなり、企業にはグローバルな競争力が必要とされるようになりました。
また、デジタル技術の浸透によりビジネスの形態そのものも変化を続けています。ECサイトをはじめとした店舗や事務所を持たない形式での事業の登場と一般化が起こり、さらにはテレワークによる労働環境の変化ももたらしています。
また、新型コロナウイルス禍で従来型のビジネスが出来なくなる事態が発生したことも、DXの必要性に拍車をかけるものとなりました。ニューノーマルと呼ばれる環境でのビジネスの形として、新たな価値をもたらすDXに期待が集まった形です。
これまでも企業は業務へのITの導入を図り、業務の効率化を図ってきました。このIT導入と業務効率化は、既存の業務での効率上昇を目的としていました。
DXにおけるデジタル技術の活用は、この業務効率化を超えて企業が新たな価値を生み出し、ビジネス形態そのものの変革を目的とするものです。
DXの難しいところは、企業によって形が変わってくることです。業務内容、会社の風土、積み上げてきたデジタルの土壌などにより、実現できる内容はまったく違うものとなり得ます。新たな価値の形には定型はなく、各社で独自性を持って取り組まなくてはいけないものなのです。
このような前提において、DXを実現するためには異なる二つの方向性を持った人材が求められます。一つ目は、自社業務やバックグラウンドを熟知し、その発展の形を作り上げるDXのプロジェクトを推進するための人材です。もう一つの方向性としては、デジタルスキルに精通し、その活用が可能である人材。この二種類の人材(あるいは両者を満たす人材)がDXの推進には必要となります。
ですが、そんな条件を満たす人材は簡単には現れません。世界中の企業がDXを実現するための人材確保を課題としている事態がその証拠ともなっています。
DXに必要なリスキリングですが、企業が実際に取り組もうと考えた場合には、通常の業務時間中に教育のための時間を設ける必要があります。また、先端IT人材となり得る人物、リスキリングを受けるべき人物のリストアップも重要です。教育のためのコンテンツも社外のリソースを使用するなど工夫して調達します。
そして、なにより重要となるのは、教育対象となる人材に対して、リスキリングに対する理解を得ることです。趣旨に賛同してもらい、納得の上でリスキリングにあたらなくては教育効果は期待できないのです。
システムの運用業務にあたっているメンバーは、もともとIT人材です。ITに関するスキルは確実に保有しています。何らかの理由でシステム運用業務の担当となり、交代要員があらわれないまま幾年月というケースも多々あります。リスキリングにより先端IT人材となるべき素材が、眠っている可能性が高いと考えられるのです。
システム運用業務の現場にリスキリングをもたらすためには、業務を効率化してリスキリングの時間を確保する必要がでてきます。しかし、日々の運用、保守、調整といった業務で手一杯でそんな時間の確保は難しい、というような声も聞こえてきそうです。
システム運用業務の効率化を図る場合は、自動化を図ることが一つのアプローチとなります。
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