業務の自動化が定着しつつある現代のビジネス環境ですが、そこには解決できていない課題があります。従来の自動化は、可能な範囲で自動化する傾向があり、業務プロセス全体の自動化の実現が困難でした。しかし、DXや働き方改革の推進など、デジタル技術を駆使する時代が到来したことで、ハイパーオートメーションが注目されるようになり、一歩進んだ自動化を実現する傾向が強まりつつあります。今回はハイパーオートメーションの基本的な意味から注目されるに至ったビジネス背景、メリットや注意点を解説します。
ハイパーオートメーションとは、機械学習やAI、RPAなどの自動化ツールを組み合わせることで、複数の業務を自動化する概念または技術を意味します。ハイパーオートメーションは、業務を遂行する上で必要な手順をすべて自動化できる、最先端の自動化技術です。例えば、発見・分析・設計・自動化・測定・モニタリング・再評価・再試行など、ツールの組み合わせ次第では複雑な業務の自動化もできます。
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ハイパーオートメーションは、2019年にアメリカの調査会社ガードナーが「Gartner IT Symposium/Xpo 2019」で2020年の戦略的テクノロジートレンドの1位であることを発表しました。さらに翌2021年には、ハイパーオートメーションのソフトウェア市場は、2022年に約6000億ドル規模に成長する見通しであると予測しています。
ハイパーオートメーションが注目される理由は、現代のビジネス背景が起因しています。中でも特に大きな要因となっているのが、RPA(Robotic Process Automation)の浸透とリモートワークによる働き方の変化です。
ハイパーオートメーションはもともとRPA技術を踏襲した概念です。
RPAが普及し始めた2016年は「マクロの便利版」「単純作業(単純労働)の自動化」など、RPAを用いた自動化はそれほど注目を浴びていませんでした。というのも、現在とは異なり、働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されておらず、業務プロセスの改善に注力する企業が少なかったからです。
それから数年経ち、最新技術の導入が市場で生き残るカギとなること、業務プロセスの自動化が企業・従業員の双方に大きな影響を与えることが分かりました。それ以来RPAが浸透し、業務プロセスを改善できるツール、という立ち位置に落ち着きました。
RPAが浸透したことでより広い業務の自動化が注目されるようになります。RPAの適用範囲は業務の一部であることが多く、業務の効率化を進めるためには、自動化の範囲を拡大する必要があります。その結果、RPAなどのツールを組み合わせたハイパーオートメーションが注目されたのです。
現代の働き方は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や働き方改革、新型コロナウィルスの流行など、従来のオフィスワークからリモートワークへ変化しつつあります。
たとえ、新型コロナウィルスが収束したとしても、現代のデジタル技術を活用したDXや働き方改革は事業継続のためにも必須です。特にコロナ禍によってリモートワークを導入した企業の場合、DXと働き方改革を進めるきっかけにもなります。これらに注力する一つの方法としてハイパーオートメーションが注目されています。
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ハイパーオートメーションは、自動化範囲の発見・設計から再評価・再試行まで一連のプロセスを自動化できます。中でも、自動化する業務の発見は人力では見つけにくく、見つけ出せたとしても自動化ツールの機能を充分に使いこなせない設計であることが多いです。ハイパーオートメーションなら、新たに自動化できる業務を容易に発見し、最も効率的な業務プロセスを導き出すことで、自動化ツールの機能を最大限に引き出します。
従来の自動化は作業の一部であったため、業務全体の効率化には課題が残ったままでした。例えば、上司の判定を待ってから着手する作業、自動化によって作成されたデータを部署ごとに加工する作業など、自動化できる範囲が限定的な作業が存在します。ハイパーオートメーションは、人の判断を要する作業などの自動化できる範囲が限定的な作業に対して大きな効果があります。ヒューマンエラーによる巻き戻し作業や原因特定・改善にかかる時間も発生しないため、業務全体の効率化を期待できます。
ハイパーオートメーションはメリットばかりではありません。導入の際にいくつか注意したいことがあります。
業務プロセス全体の見直しは、ハイパーオートメーションを導入する際に必須と言えます。業務毎に個別のツールを導入していては、ツールの機能を最大限引き出すことは困難となり、効果も減少してしまいます。また、各ツールとの連携もできない可能性もあるため、組織全体で業務プロセスの見直しが必要です。
新たなツールや技術を業務に導入する際は、稼働が安定するまでは万全な運用体制を整えましょう。一連の業務プロセスを自動化できるからといって、煩雑な運用体制を敷いてしまっては、運用時のトラブルやイレギュラー発生時の対処に遅れを取ってしまいます。このような問題発生時でも、素早く対処できるような体制を整えておくことが、業務の安定した自動化に繋がります。
ハイパーオートメーションは導入・実現までに時間がかかってしまいます。サービスやツール選びに失敗してしまうと、コストや時間、これまでの取り組み内容の大半がムダになってしまいます。
現在は、自動化コンサルティングを行っているベンダーもあり、自社の状況や展開している業務・サービスに合わせた自動化ツールを提供してくれます。中には、自社に合わせた独自ツールを開発してくれるサービスもあるため、ハイパーオートメーションに悩む場合は一度問い合わせることをおすすめします。
今回はハイパーオートメーションの基本的な意味から注目されるに至ったビジネス背景、メリットや注意点を解説しました。ハイパーオートメーションは従来の自動化から、さらに進んだ自動化を実現できる技術です。これまで不可能だった自動化が実現できるようになり、業務全体の効率化に繋がります。また、DXや働き方改革にも貢献するため、今後のデジタル化が進んだ市場でも、優位性を保つことができます。ハイパーオートメーションは企業の社内改革を後押しし、加速する市場においても有効な技術です。