ひとり情シスとは、社内の情報システム部門を担当する人材が一人、もしくは数人しかいない状態のことを指しています。ちなみにこれは決して珍しい状態ではなく、零細・中小企業ではとても多くなっており、場合によっては従業員が100名以上いる企業でも、ひとり情シス体制で対応している場合があるようです。
具体的な数値でいうと、2018年のデル株式会社の調査によれば、中堅企業の約38パーセントは、情報システム担当者が1名以下という体制になっているようで、今後もひとり情シス、ゼロ情シスが大幅に進む傾向にあるようです。
ちなみに情報システム担当者の離職率が、21パーセントと非常に高い数値になっていることや、中堅企業では、専任情シスではなく、所属する部門がIT関係ではない兼任情シスが56.6パーセント(従業員が100名から200名未満の企業の場合だと69.4パーセント)と多くなっていることなども、抑えておきたい特徴の一つといえます。
ではなぜ、上で紹介したような状況になっているかと言うと、理由としては大きく以下の3つのことが考えられます。
まず一つとして、人員を確保するための予算などを判断する経営層が、情シス担当者の重要性を理解していないということが考えられます。
ITを上手く活用できれば、大幅な業務効率化や、新しいビジネスモデルの構築などに繋げられるのはもちろんですが、それだけではなく、会社にある情報を適切に管理、運用するというセキュリティーなどの面でも、情報システム部門は重要なポジションになります。
しかし、経営層がそのことを理解しておらず、とりあえず必要最低限のことを、パソコンなどに詳しい他の部署の人間に担当してもらおうといった考えであったりして、あまり重要視されていないケースも多くあるようです。当然ですが、経営者がそういった考えであれば、必要十分な人員が確保されることは難しくなり、今回紹介しているような「ひとり情シス」で対応するという状況になってしまいます。
一方で、情報システム部門の重要性は理解しているが、人員を確保できるだけの予算がないといった理由も考えらます。高度で専門的な知識や技術を持った人材を雇用するとなると当然それ相応のお金が必要になり、十分な予算がなければ採用することが不可能となってしまいます。
最後の3つ目はIT技術者そのものが不足しているという理由です。専門的で高度なITの技術・知識を持った人材は全体的に不足していると言われています。そのため、採用するだけの予算もあり採用に積極的だが、欲しい人材がなかなか見つからず、採用できないというケースもあるようです。
ひとり情シスが増加した背景について紹介しましたが、ひとり情シスの状態でシステムの運用や管理を行うことには様々なリスクがあり、注意が必要といえます。考えられる危険性や問題などを整理していきましょう。
まず1つ目は、担当者が重い病などにかかってしまって入院することになった場合、代わりに担当業務を担える人がいなくなるということです。いわゆる「ゼロ情シス」の状態になり、会社のシステム面を任せられる人がいなくなってしまって、普段の定常業務に支障が出てしまう可能性があります。また、不在の間に、障害などのトラブルが発生してしまう可能性もゼロではありません。
2つ目は、現在の担当者が退社してしまうことによるリスクです。先ほどの一つ目の危険性とも重なりますが、一人しかシステム面を担当できる人がいないと、その人がいなくなってしまった時に、誰も代わりに業務を担うことができません。ひとり情シスの場合、業務の引継ぎや情報共有などもできない状態のまま会社を去ることになるので、後で慌てて人材を採用しても、後任の担当者は何をどうすればいいのか分からない状況になってしまいます。
3つ目は、普段こなさなければならない目の前の業務(インフラの保守や運用など)に追われ、IT戦略の設計や社内情報システム環境の再構築など、中長期的な視点で重要となる業務になかなか時間を割いて取り組めないという危険性です。
ひとり情シスは、会社のシステム面に関わる全てのことに一人だけで対応する形になるため、ほとんどの場合、基本的に忙しい状態が毎日続くことになります。そうなると必然的に、重要ではあるけれども、今すぐやらなければいけないものではない事は、後回しにされることになってしまいます。
4つ目は、障害時の対応が遅れてしまう危険性です。繰り返し紹介してきたように、ひとり情シスの場合、全てを自分一人でみることになるため、いつでも常にリソースに余裕がある状態を確保することは、かなり難しくなります。そうなると、重要な業務に取り組んでいて忙しい時に障害が発生しまった場合、対応が遅れてしまう危険性があります。
5つ目は情シスの担当者に業務を任せられるだけの十分なスキル・知識がない、という危険性です。先ほど上でも紹介したように、中堅企業の場合は、専任情シスではなく、所属する部門がITとは関係ない兼任情シスになるケースも少なくありません。知識や技術が乏しければ、当然、会社のシステム環境が危険にさらされてしまうなどのリスクも大きくなります。
最後の6つ目は、周りに相談できる人が誰もいない、という問題です。システムに関する決定を行う際は、外部の人間の意見や、他の会社の判断なども参考にする方が賢明ですが、ひとり情シスの場合、社内に相談できる人がいないのはもちろんですが、外部にもそういったネットワークを持っていない人が多くなります。ひとり情シス向けのセミナーなども開催されていますので、そういったものに積極的に参加して、視野を広くしておいたり、人脈を築いておくことが重要といえます。
ひとり情シスの危険性だけではなく、今回紹介した危険性や問題を解決する方法に関しても整理しておきましょう。大きく以下の3つの方向性が考えられます。
まず一つ目は、経営層の人間にITの重要性をしっかりと理解してもらい、より多くの予算を確保するというアプローチです。しっかりと重要性について説明をし、納得してもらうことが出来れば、システム面を担当する人員を増やし、負担を軽減できる可能性があります。
1つ目で紹介したように、経営層の人間にITの重要性をしっかりと理解してもらって、予算を増やし、エンジニアやシステム担当者を新しく採用する、というのもひとつの方法です。しかし、現在はIT人材不足が深刻化しており、優秀なエンジニアほど人件費が高くなってしまうため、実際に採用することは難しい傾向にあるとも言われています。
そのため、新たに人材を採用することは現実的に難しいという場合は、運用業務をアウトソースして問題を解決するのもひとつです。アウトソーシングといえば、人事や総務、もしくは経理などをイメージする人も少なくないかと思いますが、ITも対象の一つです。システムの運用、保守などもアウトソースすることが可能で、そうなれば、社内で運用や保守を行う人が不要になり、優秀なエンジニアを採用したり教育するコストも不要になるため、人件費を抑えられるようになります。
最後の3つ目は、システムを自動化することによって、システム担当者が実施しなければならない作業を極力減らし、負担を軽減するというアプローチです。ちなみに普段の定型業務だけではなく、「SDT×Kompira」等の自動化ツールを導入すれば、システム障害時の対応や作業も自動化することが可能です。復旧対応などに関しても、予めエラーに対する対処方法が決まっている場合には、全て自動化で対応をし、人による判断が必要な時だけ通知するような仕組みを加えることも可能です。
(※なお運用自動化ツール「SDT×Kompira」に関しては、以下のページでより詳しく紹介していますので、興味がある方はこちらも参考にしてみてください。)
監視システムの運用品質を向上したい
https://autolabo.sms-datatech.co.jp/archives/cases/01
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